今回は相続土地国庫帰属制度について少し掘り下げて解説いたします。国庫帰属の承認がなされた土地において後日却下事由や不承認事由が判明した場合はどのようになるのでしょうか?
まず国庫帰属の承認がされた土地において後日承認時に却下事由、不承認事由があったことが判明した場合、当該承認が取り消されるまでは効力は維持されます。
国庫帰属の承認に瑕疵があっても必ずしも取り消されるわけではありません。取り消しは承認申請者が偽りその他の不正な手段により国庫帰属の承認を受けた場合に限り取り消されます。
無論却下事由や不承認事由に該当することがわかっていた上で申請を出し承認された場合は、承認申請者は国に対して損害賠償責任を負います。
瑕疵ある国庫帰属の承認効力
まず大前提として、相続土地国庫帰属制度における承認は行政行為に該当します。なぜなら承認申請者に帰属する土地所有権を国に移転させる法的効果を有するからです。
行政行為によって形作られる法律関係は、仮に瑕疵があったとしても権限のある期間がその行政行為の取り消しを行うまでの間は効力が維持されます。したがって相続国庫帰属制度の承認も同様の取り扱いとなります。
(承認)
第五条 法務大臣は、承認申請に係る土地が次の各号のいずれにも該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければならない。
一 崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
二 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
三 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
四 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
五 前各号に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの
2 前項の承認は、土地の一筆ごとに行うものとする。
国庫帰属の承認が取り消される場合
先ほどの話と同じく、承認の取り消しは行政行為の取り消しに該当します。行政行為の取り消しとは処分時にその行政行為に瑕疵があったことを理由として法律関係を元に戻すことをいうところ、帰属承認が取り消されると土地の所有権は遡って最初から国に移転しなかったことになるからです。
行政行為の取り消しには職権による取り消しと私人からの不服申し立ての2種類あります。相続土地国庫帰属法ではしょっけによる取り消しができる要件がかなり厳しく決められております。帰属承認時に却下事由、不承認事由が存在していたことに加え、帰属承認が承認申請者による偽りその他不正の手段によってなされたことが要件となります。
厳格な理由ですが、帰属承認においては法務大臣による調査が行われます。その信用を保護する観点から瑕疵のみで取り消しができないようにされてます。例えば承認申請者が却下事由や不承認事由を隠蔽していた場合などは取り消しに該当します。
帰属承認された土地が第三者に譲渡されていた場合はその第三者の同意がないと取り消しができません。