被相続人が開設した証券口座を相続人がそのまま使うことはできません。相続人が証券口座を持っていない場合は新たに開設をし、被相続人の証券口座内容を相続人にそのまま承継します。
相続人が複数いる場合、法定相続により均等に分けてしまうと口座開設および移管の手続きが複雑になるので、相続人の一人が引き継ぐというケースが実務上は多かったりします。
遺言執行者がいる場合、遺言執行者が被相続人の証券口座の所定の用紙の提出人となります。いない場合は相続人が提出します。
相続による口座内容の移管手続き
先ほど説明した通り、証券会社に被相続人が持っていた口座をそのまま相続人が利用することはできません。移管手続きと言う形で株式の承継が行われます。証券会社により多少異なる部分はありますが、概ね4パターンに分類されます。
- 遺言書があり、遺言執行者がいる場合
- 遺言書があるが、遺言執行者が指定されていない場合
- 遺産分割協議書がある場合
- 遺言書遺産分割協議書ともにない場合
株式や投資信託は毎日変動するもののため、移管手続きをスムーズに行えるかどうかは極めて重要な問題です。当然、相続の分割などにも影響してきます。仮に相続財産全体についてすべての相続人同士の間で遺産分割協議が整っていなくても、有価証券だけは先行して遺産分割を行い、売却処分するしないなどの実務対応が現実には必要な場合があります。
特定口座への移管の場合
相続人等が取得した、上場株式を被相続人が所持していた特定口座から相続人等の特定口座に移管する場合、同じ証券会社内で移管するのか、それとも他社から移管させるのかにより手続きが異なります。
同じ証券会社内で移管を行う場合
相続人等がその証券会社に相続上場株式等移管依頼書を提出して移管をお願いします。
他の証券会社から移管を行う場合
相続人等が移管元となる他の証券会社に、相続上場株式等移管依頼書を提出して移管を依頼します。相続人等の証券会社は移管元になる「他の証券会社」からの「相続上場株式等移管依頼書」の写しと、その株式等の取得費用、取得日、その取得日にかかる日数等を証明する書類の送付を持って、その株式をほふりの方法によって相続人等の特定口座に受け入れる形となります。
上場株式を相続し、その株主名簿上の名義を変更する場合
上場株式においては、株券電子化に伴い株券がありません。被相続人が所有していた株券があった場合でもその株券自体は無効となります。まずはその株券に係る株式の発行会社の株主名簿に被相続人が登録されているか確認する必要があるでしょう。被相続人名義で株主名簿に登録されている場合は、先ほど説明した手続きで済みます。
一方、その手続きを忘れてしまったまま死亡してしまった場合は、失念救済手続きが必要となり、手続きが複雑になります。
これの手続きは、証券会社ではなく、株主名簿管理人の方で行う手続きとなるようですので、万が一発見した場合は、早急に株主名簿管理人に問い合わせする必要があります。
株券を紛失した場合
先ほどお伝えした通り、上場株式は株式の電子化により株券がありません。そのため、非上場株式においての株券を紛失した場合の手続きについて述べることになります。
相続した株式に係る株券が見当たらず、被相続人名義株券の喪失登録を行う場合、相続により株券を取得したことを確認できる相続関係書類を株券失効制度の手続きに要する書類と合わせて発行会社の名義書換代理人に提出する必要があります。
株券喪失者が発行会社に対して株券喪失登録請求を行います。発行会社はその喪失者を登録簿に記載します。株券を持っている人から、株券喪失登録抹消申請がない場合は、喪失登録株券を無効にした上で株券を再発行します。
株券所持人から株券喪失登録抹消申請がある場合は、株券喪失登録抹消の申請がなされたことを通知をした上で、株券喪失登録の抹消及び株券喪失登録抹消申請書に株券を返還します。