遺贈とは?
遺贈とは遺言により財産を無償で譲渡することです。原則として遺言者が死亡した時からその効力が生じます。遺言書を書いて遺産を送る人を遺贈者、遺産を受け取る人を受贈者と言います。
遺贈は大きく分けて2種類あります。包括遺贈と特定遺贈です。包括遺贈とは相続財産の全部またはその財産の割合的一部を遺贈することです。一方特定遺贈はある特定の財産のみを遺贈することです。
包括遺贈の場合は遺言書に「長男××に全財産の3分の1、使用人●●に全財産の3分の1」と言ったような形で記載されます。包括遺贈は借金、連帯保証人などの負の財産も含まれるので注意が必要です。
一方特定遺贈の場合は「長女△△に現金3000万円」のように財産を指定して行います。
遺贈の放棄
遺贈は相続と同様放棄をすることが可能です。放棄の仕方は特定遺贈と包括遺贈によって変わってきます。
包括遺贈の放棄の場合、相続放棄と同様に家庭裁判所に申述を行う必要があります。裁判所は遺言者の住所地の管轄するところとなります。基本的には相続放棄と同じ手続きです。期限も相続放棄と同様、包括遺贈のあった事実を知った日から3ヶ月以内です。
特定遺贈の場合放棄の手続きはありません。相続人や遺言執行者にその旨を伝えるだけでOKです。口頭でも可能ですが後のトラブルを防ぐために書面などに残すことをおすすめします。
または相続放棄をした人が遺贈の対象になる可能性もあります。相続放棄をした場合、自動的に遺贈も放棄となるのでしょうか?
結論を言うと遺贈放棄と相続放棄は全く別の手続きのため別々に申述する必要があります。遺贈のプラスの部分だけ特定遺贈により意図的にもらい、負の財産を相続放棄で処分すると否認されることもありますので注意が必要です。
相続と遺贈の違いとは?
相続と遺贈は似ているため、混同して解釈している方も多くいらっしゃいます。
相続と遺贈のもっとも大きな違いは、財産を受ける人です。相続の場合は法律で規定された法定相続人(配偶者・子・両親・兄弟など)のみに出来ると限られています。
一方の遺贈は遺言により遺産を渡すことなので遺言書に書けば誰にでもできます。簡単にまとめると相続は家族にしかできず、遺贈は誰にでもできるといったイメージです。
仮に遺言に相続人以外のものに「相続させる」と書いてあった場合、不動産などの所有権移転の登記原因は「相続」とはならず「遺贈」となります。
遺贈を登記原因とする移転登記を申請する場合、登記原因証明情報として、登記名義人の死亡を証明する情報の他に遺言書も提供する必要があります。
遺贈と税金
遺贈を受けた場合の税金は贈与税ではなく相続税となります。一般的には贈与税より相続税の税率の方が低くなっております。
しかし遺贈を受ける人によって支払うべき相続税の金額が変わってきます。
遺贈を受ける人が被相続人(亡くなられた方)の法定相続人の場合は、引き継ぐ相続財産の評価額によって税率が変化しそれ通りに計算し支払います。(10〜55%)
相続税率の詳細は国税庁のホームページで確認することができます。
一方遺産を受ける人が法定相続人でない場合は、法定相続人の時と同様に計算しその金額に2割加算したものが相続税となります。
法定相続人になれる人
- 配偶者
- 親
- 代襲相続人である孫
- 子(養子を含む)
法定相続人になれない人
- いとこ
- 祖父母
- 甥姪
- その他親族
- 内縁の妻
- 世話人や家政婦
遺贈を受ける人が法定相続人でない場合は相続税額が上がることに注意が必要です。
一般的には遺贈は法定相続人以外に行われるものなので、税金が2割増しになることを頭の片隅に入れておきましょう。