遺言執行者は一度就任をしたら自由に辞任することはできません。正当な事由があるときに家庭裁判所の許可を経て辞任が可能です。正当な事由とは、遺言執行者が長期の出張や病気による長期入院など職務執行ができない場合となります。
また職務の一部辞任は認められておらず、辞任する場合は全ての業務から降りることになります。
辞任の手続き
辞任の手続きは家事審判事項であり、相続開始の地を管轄する家庭裁判所に申立をします。家庭裁判所による選任の場合は選任した家庭裁判所で申立をします。
辞任の申立があると家庭裁判所は正当な事由の有無を調査してその結果申立の可否を決定します。辞任を認める許可がある場合はすぐに効力が発生し遺言執行者はその地位を失います。申立を却下する決定に対して即時抗告も可能です。
遺言執行者の解任
遺言執行者がその任務を怠ったり、不適切な対応があった場合は利害関係人の請求により家庭裁判所より解任されることがあります。
任務を怠ったとありますが、これは遺言執行者が遺産の調査をしない、財産目録を作成しない、事務処理の報告をしないなどの場合です。その他不適切な行為ですが、過去の事例としてあるのが特定の相続人の利益に偏った行動をした場合があります。このように公平性を欠く場合も解任事由となりうるでしょう。
これ以外にも遺言執行者自身が行方不明の場合も該当します。なお解任は家庭裁判所が決定するため、相続人同士で決まることでないことに注意が必要です。
解任手続き
解任についてですが、相続人、受遺者、その他利害関係者から家庭裁判所に解任の請求をし、家庭裁判所の審判を経て解任となります。遺言執行者の地位は解任請求がされただけでは失うものでありません。
なお先ほどのケースのように特定の相続人の利益になるように執行を進めている場合などは、執行の公正を期すために家庭裁判所は遺言執行者の職務を停止することができます。また代行者を立てることもできます。
遺言執行者の欠格事由
未成年者及び破産者は遺言執行者になることができないと民法に規定されております。したがって遺言執行者が自己破産した場合は直ちに遺言執行者の地位を失います。
破産管理人はその地位を継承することはありませんが、すでに執行した範囲の報酬については破産管理人の管理下におかれます。
なお未成年者が結婚することで成年とみなされ、このケースも遺言執行者となれます。また結婚後離婚したとしても遺言執行者の地位を失うことはないと解釈されております。
どの時点でというのが争点となりますが、民法の規定では未成年者と破産者は遺言執行者の地位になれないと規定されているため、就任時に復権、成年していれば問題ないと解釈されます。