生命保険の契約では契約者、被保険者(保険をかけられる人)、受取人(お金を受け取る人)の3者が登場します。契約者=被保険者であったり、契約者、被保険者、受取人が全て違う人など、各契約によって異なります。
生命保険は通常の相続財産とも若干異なっており、少し特殊な位置付けとなっております。通常は保険金の受取人は契約時に決めるのですが、その後に遺言によって変更することは可能なのでしょうか?今回は生命保険と遺言の関係について詳しく解説いたします。
遺言によって受取人を変更できるか?
生命保険に関する遺言作成時の問題点として「遺言によって生命保険金の受取人を変えることができるか否か?」ということがあります。通常は生命保険会社に連絡をして受取人を変更すればいいのですが、手が震えて字が書けないなどで公正証書遺言により保険金の受取人の変更をしたい場合などがケースとして考えられます。
遺言による保険金受取人の変更に関しては従来は法律に記載されておらず不明確でしたが、H22.4.1に施行された保険法によって保険金受取人の変更に関して明確化されました。「保険金受取人の変更は、遺言によっても、することができる」とされました。
●保険法第44条(遺言による保険金受取人の変更)
- 保険金受取人の変更は、遺言によってもすることができる。
- 遺言による保険金受取人の変更は、その遺言が効力を生じた後、保険契約者の相続人がその旨を保険者に通知しなければ、これをもって保険者に対抗することができない。
この場合、遺言による保険金受取人の変更は、その遺言が効力を生じた後、保険契約者の相続人がその旨を保険者に通知しなければこれをもって保険者(保険会社)に対抗することはできません。また死亡保険の保険金受取人の変更は、被保険者の同意がなければ無効になってしまいます。
さらにこの保険法はH22.4.1〜施行されたものなのでその施行日より前に契約された保険についてはこの法律が適用されませんので、個別で保険会社に応相談という対応になります。
遺言による保険金受取人の変更の問題点
先に説明した保険法第44条2項に記載されているように、保険金受取人の変更を記載した旨の遺言が効力を生じた後、保険契約者の相続人がその旨を生命保険会社に通知する前に、保険金受取人が請求してし、保険金が支払われた場合は、遺言による変更後の保険金受取人は保険金の請求ができません。
このようなトラブルを避けるには、遺言執行者を指定し、その者に生命保険会社へ通知してもらうようにしてもらうなどの工夫が必要です。
他にも生命保険受取人を遺言で指定できるかどうかも問題になります。一般的には保険金受取人を最初の契約時に指定しておりますので問題はないのですが、そうでない場合もあるかもしれません。実際のところ保険法にも遺言による保険金受取人の指定については規定がありませんので個々の保険者に委ねられることになります。