被相続人が抵当権のついた不動産を所有していることがございます。遺産分割協議を行う場合、抵当権のある不動産はどのように扱うべきでしょうか?
被担保債務の名義
遺産の中に抵当権のついた不動産がある場合、これによって担保されている債務が存在します。その債務者が被相続人なのかそれとも別の第三者なのかによって話が変わってきます。それぞれのケースを仮定して解説していきます。
●被担保債務が被相続人名義のものであった場合
被担保債務が被相続人名義で借り入れられた者である場合、相続の開始によって債務は当然法定相続人の人数に応じた割合で、各相続人に帰属します。仮に相続人同士の間で特定の相続人にのみ債務を負担させる旨の特約をしてもこれを債権者に主張することはできません。
しかし抵当権を含めた担保権について被担保債務と同じように考えて、担保権の負担のついた不動産が法定相続分に応じて分割された割合で当然に各相続人に帰属するなどとする必要はございません。
後日債権者が担保権を実行してきた場合には、担保権の負担のついた不動産を遺産分割によって取得していた相続人は自己の負担で他の相続人が支払うべき債務の返済をしたことと同じになりますので、その分を他の相続人に請求することもできます(これを求償するといいます)
なお相続人のうち相続人が被担保債務を全額債権者に支払う代わりに担保付き不動産を取得することを取り決めてその不動産の評価金額から債務額を控除して分割することも可能です。
この場合は他の共同相続人が債権者から自己の相続分に相当する債務の支払いを請求された場合、その支払いをしなければならないものの、相続人内部では担保付き不動産を取得した相続人に求償することになります。
また遺産分割を行う際に、債権者の同意があれば特定相続人のみ(わかりやすい例で言えばその不動産を全て取得する相続人など)が被担保債務を引き受け、他の相続人は被担保債務を引き継がないとすることもできます。ただしのちのトラブルを防ぐため必ず書面化していた方がいいでしょう。
●被担保債務が第三者のものであった場合
被担保債務者の借り入れをしたのが第三者だった場合について考えます。被相続人がその第三者のために不動産を担保として提供しただけである場合、その第三者の資金力が十分に信用できるのであるのならば、担保について無視して遺産分割を行うこともできます。
後日担保権が行使された場合、担保権のついた不動産を取得していた者がその第三者に対して求償するという運びになります。
一方第三者が資金力がないのが明らかな場合、担保権のついた不動産を遺産分割によって得る者が損をしないようにその債務額を控除した上で分割するのが基本となっております。