遺言書を破棄してしまった場合や遺言物が破棄されてしまった場合、遺言はどうなるのでしょうか?この根拠となる条文は民法1024条です。
民法1024(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
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遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。
民法1024条に関連した判例
被相続人は罫線が印刷された用紙に自筆証書遺言を作成しました。被相続人が亡くなった後に遺言書が発見されましたが、その遺言書には文面全体の左上から右下にかけて赤のボールペンで斜線が書かれていました。
遺言書の管理状態などから被相続人が書いたもので間違いがない状況でした。この遺言が有効であるか無効であるか?と言う裁判が行われましたが、最終的に最高裁で民法1024条の故意に遺言を破棄したときに該当し遺言は撤回したものとされました。
遺言の破棄
自筆証書遺言や秘密証書遺言が故意に遺言者によって破棄された場合は、その破棄した部分については遺言を撤回したものとみなされます。公正証書遺言の場合、手元にある正本や謄本を破棄しても撤回とはなりません。
仮に第三者が破棄したとしても、それが遺言者の意思の場合、遺言者自身の破棄とみなされます。破棄が故意であれば、遺言を撤回する旨の故意は必要ありません。
文言を抹消した場合
文言を抹消した場合、元の文言が判読可能であるとき加除変更の問題としてその方式に沿っていない限り、元の文言の遺言として扱うことになります。元の文言が判読不能になるほど抹消された場合のみ、遺言書の破棄と考えられます。
目的物の破棄
遺言者が故意に目的物を破棄した場合、破棄した部分については遺言を撤回したものとみなされます。破棄には物理的毀損に留まらず、経済的価値を毀損する場合も含まれます。
破棄は遺言者自身が故意に行なったものでなければなりません。
第三者による遺言者の意思ではない遺言の破棄
それでは第三者による遺言者の意思に関係なく遺言を破棄されてしまった場合、どうなるのでしょうか?当然遺言書は遺言者の意思表示であり大変大切なものです。勝手に破棄することは許されません。
仮に相続人が破棄してしまった場合は、その相続人は相続欠格者となります。遺言の効力ですが、遺言書が遺言の内容が立証できればその内容に従います。(自筆証書遺言で家庭裁判所で検認を受けた後など)一方できない場合は、遺産分割協議を行い財産を分けます。
相続人以外の第三者が遺言を破棄した場合は私文章等毀棄罪(5年以下の懲役)に問われる可能性もございます。
第三者による遺言者の意思ではない遺言の目的物の破棄
民法1024条を反対解釈をすることにより次のように考えられます。遺言者の故意や責任によらない形で目的物が破壊・破棄された場合、その目的物は、損害賠償請求権等といった形で相続財産に含まれます。また遺留分計算の基礎にも含まれます。