原則として相続放棄をした後にそれをやめるという手続きをすることはできません。ただし例外もあります。相続放棄の申し立てをしたにも関わらず、気分の変化や自己都合による撤回は認められません。
一方相続放棄が受理された時点で、本来は受理されるべきでないのに受理されてしまったケース(後述します)などは取り消しすることができます。まずは認められないケースについて具体例を添えてみていきましょう。
認められないケース
- 借金がたくさんあり放棄したが、後から財産があることが判明した場合
- 一人に相続させるために放棄したが他の相続人が裏切り放棄をしなかった場合
- 遺産分割協議でもめたくないから放棄した場合
一回相続放棄の申述をして受理をされてしまったら撤回はできません。
取り消しが可能なケース
先ほどお伝えしたように撤回は減速できないのですが、相続放棄に次の民法第1編総則および第4編親族に定める取消事由がある場合は取消しができます。
- 制限行為能力者(未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人)が単独で相続放棄をした場合
- 詐欺・強迫により放棄した場合
- 後見監督人がある場合に、被後見人または後見人がその同意を得ないで行なった場合
取り消しに必要な事項
- 申述書類…家事審判申述書
- 申述人…相続放棄の申述をしたものもしくはその法定代理人
- 申述先…相続開始場所の管轄の家庭裁判所
- 必要費用…申述人1名につき印紙800円、郵送代金
被相続人の戸籍謄本、相続放棄申述受理証明書、申述人の戸籍謄本が必要になります。
取消可能期間
取り消しが可能な場合であっても、その取消権は、その権利行使の追認をすることができる時から6か月間行わない場合、もしくは相続放棄の時から10年を経過した場合には、時効により消滅します。それ以内に行う必要がございます。
取消審判と即時抗告
相続放棄の取消しをすることができる者は、申述を却下する審判に対し、即時抗告をすることができます。
申述書記載の注意点
申述書には、相続の放棄申述書の記載事項のほか、相続の放棄の申述を受理した家庭裁判所および受理の年、月、日・相続の放棄の取消しの原因・追認をすることができるようになった年、月、日・相続の放棄の取消しをする旨を記載し、申述者or代理人が署名、押印をしなければなりません。
知らない間に相続放棄をしていた場合
自分の意思とは無関係に相続放棄がされていた場合は当然無効となります。考えられうるケースとして、相続放棄申述書が他の相続人が偽装した場合などがあります。無効の場合は取り消しとは異なり先ほどのような手続きは不要です。