日本では任意後見制度が存在しておりますが、世界各国ではどうなのでしょうか?任意後見制度のできた歴史を説明し、違いなどを比較していきます。
任意後見制度の歴史
任意後見制度の始まりになったのはアメリカやイギリスなどを中心とするコモンロー諸国の持続的代理権制度にあります。これらの国では本人の意志能力喪失によって代理権が消滅するとされていたことから、その原則をやめ意思能力を喪失した当事者を保護するために代理権の存続を認めるところが任意後見制度の原型となっています。
上記は1980年ごろにアメリカ、イギリス、カナダなどで法制化されております。一方ドイツでは1990年に制定された法定後見制度の規定の中に任意代理人の存在を予定し任意代理の優先性などを定める幾つかの条項を設定するにとどまります。
その制度の枠組みの中で日本の任意後見に相当する事前配慮代理権と呼ばれる代理権の利用が推奨されております。カナダのケベック州は1991年民法中に委任契約の特則を入れる形で任意後見制度を構築しております。
2000年代になり欧州諸国で任意後見制度や成年後見制度を定めた法律が可決され、それぞれの国での法制化が進みました。フィンランドのように持続的代理権制度を導入する国もあればオーストリアのように事前配慮代理型を取る国もあります。各国まちまちです。
医療同意権
日本の任意後見制度では医療同意権を正面から認めるに至ってないですが、ドイツでは事前配慮代理権として医療同意権を与えています。
作成時の専門家や証人の有無
日本では公正証書で作成する場合、身内とは関係のない証人が2人必要です。書面作成において義務ではありませんが専門家が行うのが通例です。また日本や韓国では公証人の関与が必要となりますが、アメリカの場合は公証人のサイン、弁護士の連署が必要となるフランス、証人の立ち会いを求めるイングランドやフィンランドがあります。
本人による契約の撤回
日本では公証人の認証を受けた書面により発行後は正当な事由がある場合、家庭裁判所の許可が降りれば撤回することが可能とされています。韓国も同様です。しかし撤回においても作成時と同じ形式を要求するかどうかについては特段の形式を定めないアメリカ、イギリス、ドイツと、形式を要求するスイス、フランスにわかれます。
撤回に慎重さを求めるのであれば、一定の形式を要求することで身内からの圧力による撤回を回避できますが、そのようになる場合はそもそも親族同士でいざこざがあるケースのため、撤回を認めた上で法定後見に移行した方がよく、これらを踏まえると特段の形式を要求する必要はないと思われます。
親なき後問題への対応
フランスでは親自らが当事者となって子のために行う任意後見契約を認めております。